漢方大辞典

胃腸に関するお悩み

機能性ディスペプシア

2026年9月26日

機能性ディスペプシアは、「胃に明らかな潰瘍やがんなどの器質的な異常が見つからないのに、胃もたれ・早期満腹感・みぞおちの痛みなどが続く状態」です。

  • 胸やけ
  • 酸っぱいものが上がってくる感じ
  • みぞおちの不快感
  • げっぷ
  • 喉の違和感や咳

機能性ディスペプシアの主な要因

1. 胃の「適応性弛緩」がうまくいかない

食事をすると、胃は食べ物を受け入れるために、上部がふわっと広がります。これを胃の適応性弛緩(胃適応)といいます。

2. 胃から十二指腸への排出が遅れる

食べたものは胃で消化され、少しずつ十二指腸へ送られます。この胃排出が遅れると、食べ物が胃に長くとどまる→ 胃が重い→ 胃もたれ・膨満感・早期満腹感を感じやすくなります。

3. 胃や十二指腸が「敏感」になっている

内臓知覚過敏です。通常ならそれほど気にならない胃の膨らみや刺激を、「苦しい」「痛い」「胃が重い」と強く感じてしまうことがあります。

4. ストレス・自律神経との関係

胃は自律神経や脳からの影響を受けやすい臓器です。仕事や家庭のストレス、緊張、睡眠不足などが重なると、交感神経優位→胃腸の働きや感覚に影響→胃もたれ・食欲低下・みぞおちの不快感につながることがあります。

漢方的にみる機能性ディスペプシアの主な要因

1. 脾胃虚弱タイプ

脾胃が弱っていると、食べる→胃腸で処理する力が追いつかない→胃もたれ・食欲低下・膨満感といった状態が起こりやすいと考えます。

  • 特徴・症状:少量でも胃がもたれる、食後に眠くなる・だるい、食欲が安定しない、軟便になりやすい
  • 養生法:一度にたくさん食べず、腹八分目を心がける、温かく、やわらかく、消化しやすい料理を中心にする、食事時間をできるだけ一定にする
  • おすすめ食材:米、山芋、かぼちゃ、にんじん、キャベツ、鶏肉、白身魚、卵、豆腐

2. 肝胃不和・気滞タイプ 

「仕事が忙しくなると胃が痛い」「緊張すると胃が重くなる」という方に考えられるタイプです。漢方では、ストレスなどによって「肝」の気の巡りが乱れ、それが胃の働きにも影響すると考えます。

        

  • 特徴・症状:ストレスがあると胃が痛くなる、緊張すると胃が重くなる、げっぷが多い、胸やみぞおちが張る
  • 養生法:食事中に仕事や悩みを考えすぎない、急いで食べず、食事の時間をリラックスして過ごす、深呼吸を意識する
  • おすすめ食材:しそ、みつば、春菊、しょうが、みょうが、白菜、キャベツ、青菜類

3.  胃気上逆タイプ

胃の気は本来「下へ」降りるものと考えます。その働きが乱れて、上へ逆流するような状態を「胃気上逆」と捉えます。

         

  • 特徴・症状:げっぷ、吐き気、食後の膨満感、胃のつかえ、胸やみぞおちの不快感
  • 養生法:一度に大量に食べない、早食いを避ける、食後すぐ横にならない、就寝前の食事を避ける
  • おすすめ食材:おかゆ、米、山芋、かぼちゃ、にんじん、白身魚、鶏肉、豆腐、卵

季節ごとの養生

春(肝を整える季節):「気を巡らせ、ストレスから胃を守る季節」

  • 特徴:「新生活が始まってから胃が重い」「仕事が忙しくなると胃が痛む」「ストレスがかかると食欲がなくなる」という方は、胃だけでなく心身の緊張をゆるめることも大切です。
  • 養生法
    • 朝食を抜かず、食事時間を整える、夜更かしを避ける
    • 軽いウォーキングやストレッチ、深呼吸を意識する
  • おすすめ食材:春キャベツ、菜の花、三つ葉、せり、にんじん、山芋、豆腐、白身魚

夏(炎症と消耗を防ぐ季節):「暑さ・冷え・水分の摂り方から胃を守る」

  • 特徴:暑いからといって、冷たい飲み物を一気に飲む→食欲が落ちる→胃腸に負担がかかる
  • 養生法
    • 水分は一気飲みせず、こまめに摂る、冷たい飲み物を摂りすぎない
    • 食欲がなくても少量ずつ食べる、脂っこい料理を続けない
  • おすすめ食材:とうもろこし、枝豆、オクラ、かぼちゃ、山芋、豆腐、白身魚、鶏肉

秋(乾燥と回復の季節):「夏の疲れを回復し、胃腸を立て直す季節」

  • 特徴:秋は乾燥が始まる季節。漢方では「肺」と関係が深い季節とされますが、乾燥や体調変化によって食欲や消化の状態が変化することもあります。
  • 養生法
    • 夏の冷たい飲食から少しずつ温かい食事へ、朝晩の冷えに注意する
    • 食事を抜かず、規則正しく食べる、夏の疲れを睡眠で回復する
  • おすすめ食材:山芋、れんこん、かぼちゃ、きのこ類、さつまいも、白身魚、豆腐、白ごま

冬(冷えを防ぎ血流を守る季節):「温めて、胃腸の力を守る季節」

  • 特徴:冬は寒さによって活動量が減り、食事も高カロリーになりやすい季節。寒さは「腎」と関係が深いと考えますが、日々の消化を担う脾胃を冷やさないことも大切です。
  • 養生法
    • 温かい食事を中心にする、冷たい飲食物を摂りすぎない
    • 暴飲暴食を避ける、夜遅くの食事を控える
  • おすすめ食材:大根、白菜、にんじん、れんこん、山芋、かぼちゃ、きのこ、黒豆、鶏肉、白身魚、豆腐

一陽館薬局ならではのサポート

機能性ディスペプシアは、胃カメラなどで潰瘍やがんなどの明らかな器質的異常が見つからないにもかかわらず、胃もたれ、食後の膨満感、早期満腹感、みぞおちの痛みや灼熱感などが続く状態です。

現在の西洋医学では、単純に「胃酸が多い」「胃の動きが悪い」だけではなく、胃の適応性弛緩や胃排出、胃・十二指腸の知覚過敏、脳と胃腸の相互作用、ストレス、睡眠、感染など、さまざまな要素が関係すると考えられています。
西洋医学では「脳―腸相互作用」という視点が重視されており、ストレス管理などの行動的アプローチも治療選択肢として検討されています。

一陽館薬局では、漢方の「その人を見る」という視点を重ね、症状だけではなく、胃腸が健やかに働ける体の土台づくりを一緒に考えます。
機能性ディスペプシアでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。