不妊体質の改善は漢方の得意分野
『臓腑病』と『経絡病』
東洋医学の考え方では、病気には『臓腑病(ぞうふびょう)』と『経絡病(けいらくびょう)』という区分があります。
- ●臓腑病……内臓の不調が原因の病状
- ●経絡病……「気」の伝達不良による病状
通常は、『臓腑経絡』とひとまとめにして病状や治療法を検証しますが、不妊体質は、どちらかといえば『臓腑病』に分類されます。
東洋医学には「様々な療法」がありますが、不妊体質の方が抱える卵巣機能や子宮内の着床環境の不調は、内臓機能の問題ですので、経絡の流れをスムーズにし、表面的な「巡りを整える」だけでは、臓腑そのものにアプローチすることはできず、本質的な改善には至らないと考えられます。
その点、漢方薬は、「内臓機能の改善」と「巡りを整える」ことの両面からのアプローチができるため、不妊体質の改善は得意分野だと言えるでしょう。
東洋医学の療法に見る違い
漢方療法では標治と本治の療法が可能です。
例えば、妊娠しづらい体質の方に多い「肩こり」「腰痛」といった症状が、「巡りを整える」療法(標治)により一時的に楽になったような感覚があれば、不妊体質の改善が進んでいると勘違いされる場合もあるかと思います。
でも、表面的な症状が一時的に楽になったからといって、安易に内臓の働きまで良くなったという判断はできません。
標治は時間をかけても内臓の機能回復に作用するものではないのです。
一方、漢方療法の場合、服用した漢方薬が作用し、内臓機能が回復した結果として、表面的な諸症状が解消されます。
その点から、病状の深さによっては、効果の実感として、時間がかかる場合もあります。
ですから、漢方薬の服用により「冷え」や「生理痛」が解消した場合には、内臓機能が回復したことにより不妊体質自体の改善が進んでいる証(あかし)だといえるのです。
現在、ご自身が「適切な体質改善」の取り組みができているかどうか心配な方は、お気軽に子宝相談をご利用ください。
~不妊治療保険適用時代に漢方が求められる理由~
漢方の3大得意分野
2022年4月から、新たに体外受精や顕微授精などの不妊治療にも健康保険が適用されることになりました。
とはいえ、保険適用の体外受精や顕微授精、凍結融解胚移植には、年齢や回数の制限があるのです(人工授精は制限なし)。
不妊治療前後の体調変化に応じて漢方を取り入れることは、不妊治療の成功のためにも、また、不妊治療とは別の角度から妊娠力を高めることにも貢献できると考えています。
1. 基礎体温の安定化
日々の体調をあらわすものとして基礎体温は多くの情報が読み取れるものですが、不妊治療はそもそも「基礎体温を正常にするための治療」ではないことから、治療の内容によっては元のリズムが崩れてしまうこともありますし、基礎体温が乱れた状態のまま治療を進めていくケースもあるようです。
治療中の周期は仕方ないとはいえ、不妊治療から離れ、ふと気づくと不妊治療前のリズムとは違っていることに混乱されるご様子も見受けられます。
こんなこと起こっていませんか?
- 高温期の体温のままで生理が始まるようになった
- 低温期も高温期も全体的にどんどん体温が高くなってきた
- ギザギザした上下の変動が激しくなってきた
- 排卵日が早くなってきた
- 排卵日が遅れるようになってきた
漢方で基礎体温から読み取れること
全体の体温そのものは代謝や体内の温熱バランスをあらわしていると考えます。
高め(低温期でも36.7度付近で高温期は37.0度を上回る)=「陰虚」
体の中に熱がこもりやすく潤いや艶の不足につながりやすい。
変化 <経血減少、生理痛増悪、おりもの減少など>
低め(低温期は36度に届かず高温期も36.7に満たない)=「陽虚」
俗に代謝が低いといわれるような様子で気血水のめぐりが弱く停滞しエネルギー不足になりやすい。
変化 <体の冷え、卵子の発育に時間を要する、排卵が遅れる、排卵日がわかりにくいなど>
周期によりバラバラ、不安定=「気滞」
ストレスや生活リズムの乱れなどにより、さまざまな働きが過剰になったり抑制されたりする。
低温期の基礎体温
卵子が成熟に向かう時期のめぐりと温熱環境ととらえます。
ギザギザしているのは不安定=「瘀血」で、めぐりが停滞するため経血に塊を含んで生理痛がひどくなったり、月経の開始がはっきりしない様子がみられます。
高温期の基礎体温
排卵し受精後、着床が決まる時期のホルモンバランスととらえます。
温度が低かったり、日数が短かったりする=「腎虚」と、生殖にかかわるエネルギー=「精」の不足により、着床の維持が難しくなってしまうことも予想されます。
結果として、卵子の質や着床にかかわる子宮内の環境の不備を招くことになりかねません。
バランスの崩れがどこにあるかを、基礎体温を参考に読み取り、妊活中の体調のバロメータとして、漢方処方の選択に応用していきます。
2. 子宮内膜の厚さを養う
子宮内膜は、着床を担う場所として、厚み・弾力・温かさ・栄養などが必要で、子宮内膜が良質であるほど着床にも有利であることは言うまでもありません。
中でも子宮内膜の厚さは、1周期の中でも、月経~低温期~排卵期~高温期と時期により女性ホルモンの影響により変化しており、排卵前は9~13ミリ程度になるとされています。
特に高温期中期は、着床にかかわるため、必要十分な厚さで受精卵を受けとめたいものです。
子宮内膜に注目して着床力を高めましょう。
こんなこと起こっていませんか?
- 子宮内膜が薄いから胚移植ができない
- 移植周期にエストロゲン補充剤などを使用しても厚さが足りない
- 排卵誘発剤を使うようになってから経血量が極端に減った
- 年齢的に月経そのものに不安を感じる
- 何度も移植するが着床しない
一陽館薬局の子宝漢方での子宮内膜の補う考え
全体の体温そのものは代謝や体内の温熱バランスをあらわしていると考えます。
1. 「補陰」=子宮内膜の材料を増やす
補陰補血(=血や体液を補う)ことにより、子宮内膜の土壌を養うことをめざします。
2. 「補腎」=ホルモンバランスを整える
生殖に関わる生命エネルギーの源(=腎精)を補い、卵巣の働きを助けて必要とされるホルモンがバランスよく分泌されることをめざします。
3. 「補肝」=めぐりを整える
女性の月経システムの要ともいえる蔵血力を補い、スムーズに栄養血が送られることをめざします。
赤ちゃんにもお母さんにも自然でやさしい子宮環境づくりを漢方でお手伝いいたします。
3. 精子の運動率をサポートする
女性側に不妊原因が見つからない場合でも、精子の状態次第で不妊治療の方向性が決まっていくことが一般的だと聞きます。
医学的に男性不妊の原因があり治療対象になる場合を除くと、高度治療になるほど通院、投薬、採卵、移植といった直接的な体への負荷は女性側にかかってくるのが現実です。
精子の状態がより元気になることは、受精率向上や胚の質を高めて結果的に妊娠に有利となることに加え、どうしても体外受精や顕微授精といった高度治療に臨むとしても、ご夫婦の心身のストレス軽減にもつながるのではないかとも考えています。
ご相談者からわかる精子の状態に反映される体質的特徴
- 胃腸が弱い
- 下痢や軟便傾向
- ストレスを抱えやすい
- 慢性的に疲れが抜けない
- 花粉症やアレルギーがある
元気不足は精子の元気にも反映されると考えます
活動の意欲や元気エネルギーは「脾」(=胃腸)で産生され蓄えられると考えらえています。胃腸が弱く元気エネルギーを生み出す力が不足したりストレスなどで消耗すると「気虚」(=エネルギー不足)となり、また、疲れやストレスをため込むと「気滞」(=臓腑のはたらきが停滞)となり十分に体力を発揮できなくなると考えます。
漢方で精子や卵子の質を高めるといっても、その人の全精力以上の状態に変化させることはできませんが、もし、忙しくて生活リズムが乱れていたり、睡眠不足で疲れやストレスを抱えているようであれば、本来持っているはずの可能性が十分に発揮できなくなっているのかもしれません。
漢方では「不足」や「消耗」を補うことで、本来持っている体力が発揮されるようになれば今より可能性を高めることにつながると考えています。
精子も加齢により質が変化します
精子も一定年齢以上になるとDNAの損傷を含むものの割合が増えることがわかってきました。
卵子だけが老化するのではなく、精子も老化することをふまえて「腎精」を養うことが大切です。
精子の形成には74日程度かかるといわれますので、気になる場合はご夫婦で漢方をご利用いただくことをおすすめいたします。
漢方相談は、精神面やご夫婦の事情など相談しづらいことも気兼ねなくお話いただくことで、心の負担が軽くなり、ご夫婦関係にもメリットが大きいといえます。