漢方大辞典

尿に関するお悩み

夜尿症

2026年1月9日

夜尿症は、夜間の睡眠中に排尿のコントロールができず、おねしょをしてしまう状態を指します。
小児に多く見られますが、高齢者でも排尿機能や睡眠の質の低下とともに増えることがあります。
一時的なものから長く続くケースまであり、生活の質やご家族の心配ごとにもつながる症状です。

  • 眠りが深く、夜中に目が覚めにくい
  • 風邪をひきやすく、気管支や鼻炎など呼吸器系が弱い
  • 神経質・緊張しやすい性格で、ストレスの影響を受けやすい
  • 冷えやすく、下半身の血流が弱い
  • 舌の色が淡く、歯型がついている

夜尿症の主な要因

1. 抗利尿ホルモン(ADH)分泌リズムの未熟性

夜間にADHが十分に分泌されない、昼夜のホルモン分泌リズムが未完成という状態がみられ、
夜にも大量の尿が作られてしまうため、膀胱容量を超えて尿が漏れます。

2. 機能的膀胱容量の小ささ

膀胱壁の過敏性、膀胱排尿反射が起こりやすい、日中の頻尿・我慢不足
結果として、少量の尿でも排尿反射が起きる、夜間に膀胱が尿を保持できない状態に。

3. 覚醒障害(睡眠中に目覚めにくい)

夜尿症の子どもは、深い睡眠(ノンレム睡眠)が多い、膀胱の尿意刺激が脳に伝わりにくい、尿意で目覚める覚醒反応が弱いという特徴を持つことがあります。
排尿中枢と覚醒中枢の連携が未熟なため、尿意を感じても目が覚めない、排尿反射だけが起こるという現象が起こります。

4. 睡眠障害・呼吸障害との関連

睡眠時無呼吸症候群、いびき、アデノイド肥大
これらがあると、睡眠の質が低下、ADH分泌リズムが乱れる、夜間尿量が増加という悪循環が生じます。

漢方的にみる夜尿症の主な要因

1. 腎気不足タイプ

・漢方で「腎」は排尿や生殖、成長発育をつかさどる重要な臓腑です。
腎の気が弱いと、膀胱の開閉をコントロールする力が不足し、夜間に尿が漏れてしまいます。

  • 特徴・症状:成長期の子どもに多い、体力が弱く、風邪をひきやすい、夜中に深く眠りすぎて尿意で目覚められない
  • 養生法:腎は夜に養われるため、理想は21〜22時就寝、夜中に無理に起こさない(腎気を消耗)
  • おすすめ食材:黒ごま、黒豆、山芋、栗、くるみ、卵、鶏肉、白身魚

2.   脾虚タイプ

・「脾」は食べ物から栄養やエネルギーをつくり出す臓腑。
脾が弱ると、体の水分代謝が乱れて「余分な水分」が残りやすくなります。「水湿(すいしつ)」が停滞し、尿がコントロールしにくくなります。

  • 特徴・症状:胃腸が弱く、軟便・下痢しやすい、体がだるく疲れやすい、日中も頻尿
  • 養生法:規則正しい生活が最重要、規則正しい生活が最重要
  • おすすめ食材:白米、もち米、おかゆ、かぼちゃ、にんじん

3.  心腎不交タイプ

・「心」は精神や睡眠を、「腎」は水分代謝や生殖を担当しています。
本来は「心」と「腎」がバランスを取って安定していますが、両者の連携が乱れると夜間の睡眠が深くなりすぎて、尿意に気づかなくなります。

  • 特徴・症状:神経が過敏で夢を多く見る、不安・緊張しやすい、寝入りは良いが眠りが浅い/逆に熟睡しすぎる
  • 養生法:環境変化(進級・引越し)時は特に配慮、寝る前の刺激を避ける
  • おすすめ食材:百合根、なつめ、白きくらげ、はちみつ(少量)

4. 肝鬱気滞タイプ

・精神的ストレスが強いと「肝」の働きが滞り、水分代謝や自律神経の調整が乱れます。
これが膀胱の働きにも影響し、夜尿につながることがあります。

  • 特徴・症状:学校や家庭でのプレッシャー、イライラ・緊張しやすい、ストレスで胃腸や睡眠にも不調が出やすい
  • 養生法:感情を出せる環境づくり、呼吸を深くする習慣
  • おすすめ食材:柑橘類、しそ、三つ葉、香味野菜

季節ごとの養生

春(肝の季節)

  • 特徴:春は気候の変化で自律神経が乱れやすく、「肝」の働きが影響します。精神的ストレスで夜尿が悪化することもあります。
  • 養生法
    • ストレッチで等で気を巡らせる
    • 睡眠リズムを整える(早寝・早起き)
  • おすすめ食材:小松菜、春菊、セリなど香りのある青菜、梅、柑橘類、いちご

    

夏(心の季節)

  • 特徴:夏は「心火」が強まり、熱や発汗で体内のバランスが崩れやすくなります。体力を消耗すると深い眠りから夜尿が増えることがあります。
  • 養生法
    • 強い日差しや冷房の冷えすぎに注意
    • 水分補給は常温を心掛ける
  • おすすめ食材:ゴーヤ、セロリ、きゅうり、スイカ、トマト、緑豆

秋(肺の季節):乾燥と不安のダブルケア

  • 特徴:秋は乾燥により肺や皮膚が弱まり、免疫が低下して体調を崩しやすくなります。風邪をきっかけに夜尿が悪化するケースもあります。
  • 養生法
    • 深い呼吸で肺を養い、リラックスを意識する
    • 早寝早起きで体調リズムを整える
  • おすすめ食材:梨、れんこん、白きくらげ、はちみつ、里芋、大根

冬(腎の季節):エネルギー不足と慢性疲労を防ぐ

  • 特徴:冬は「腎」の働きが弱まりやすく、排尿コントロールに影響します。冷えは夜尿の大きな悪化要因です。
  • 養生法
    • 下半身(腰・お腹・足首)を温める(腹巻・カイロ・湯たんぽ)
    • 就寝前の水分を控え、寝る前トイレを習慣に
  • おすすめ食材:くるみ、黒豆、クコの実、羊肉、山芋、豆乳、黒ごま

一陽館薬局ならではのサポート

夜尿症は、成長期のお子さまに多く見られる症状ですが、大人にまで続くこともあり、ご本人やご家族にとって大きな悩みとなります。
西洋医学では、膀胱の発達の遅れや抗利尿ホルモン(ADH)の分泌リズムの乱れ、あるいは眠りが深すぎて尿意に気づけないことなどが原因と考えられています。

夜尿症は「成長の遅れ」や「癖」ではなく、自律神経・ホルモン分泌・膀胱機能・睡眠の質・体力の成熟度が複合的に関与する症状です。
また、体の未完成な部分から出るサインと捉え、根本から整えることを大切にしています。

漢方では、腎を補い、尿を調整する力を育てる、脾胃を整え、成長の土台を強くする、気血を充実させ、自然な回復力を高める、自律神経を穏やかに整える等を行うことで、
「気づいたら出なくなっていた」という自然な卒業を目指します。

夜尿症でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。私たちが、一人ひとりの体質と生活に寄り添ったサポートをさせていただきます。