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漢方で始める「フェムケア」

漢方専門25年の女性薬剤師が寄り添います

「フェムテック」「フェムケア」とは

「月経」「妊活・妊よう性」「妊娠期・産後」「プレ更年期・更年期」など女性特有の健康課題への取り組みとして注目されています。

「女性の健康課題は社会の課題である」という社会的な認識の高まりにともない、生理を快適に過ごすための製品、ピルのオンライン診療、生理周期・基礎体温・妊活アプリ、アフターピル、排卵日予測検査薬・妊娠検査薬など、私たちの身の回りにも女性の健康をサポートするものが増えてきました。

女性の一生は、年齢とともに変化するホルモンバランスにより、思春期、成熟期、更年期、老年期に分けられ、生活面でも結婚や妊娠・育児などのライフステージの変化など、心身ともにさまざまな変化への適応が必要となります。

男性と比べ、女性ホルモンの分泌は約1ヶ月の月経周期の中でも大きく変化し、貧血や生理痛、頭痛、便秘や肩こりなど不調が起こりやすい傾向にあります。

「フェムケア」を要する症状と漢方

(1)月経トラブル

・月経困難症

生理痛(下腹部痛、腰痛、頭痛など)や嘔吐、イライラなどの精神不安定などの症状がひどく、日常生活に支障をともなうものをいいます。

・生理痛

経血を排出するための多少の違和感はあっても、鎮痛薬が必要となるほどの痛みは要注意です。

・月経前症候群(PMS)

生理3~10日くらい前から現れ、基本的に生理が始まると治まります。頭痛・肩こり・胸が張る・便秘・過食・不眠・だるさ・眠気などの他、イライラや情緒不安定など精神的にも不安定になりやすい状態をいいます。

*漢方では***

ホルモンバランスの安定、血流の改善をポイントにおいて五臓の「肝」のはたらきを整える「疏肝理気薬」が効果的です。

漢方の「肝」には、西洋医学の「肝臓」の機能とは少し違うはたらきがあります。

・疏泄(そせつ)=全身の気をめぐらせ、精神状態を安定させるはたらきがあり、「肝気」の流れが悪くなると、イライラしたり怒りっぽくなったりします。

・蔵血=血液を貯蔵し、血液の流れを調節するはたらきがあり、不足すると生理不順や冷えなどが起こりやすくなります。

(2)貧血

女性は生理による定期的な出血により貧血傾向になりやすく、20~40代の日本人女性の約65%が鉄欠乏性貧血で、「かくれ貧血」(=自覚症状のない検査値上の貧血)も見受けられます。

貧血だと体が酸素不足になり、動悸、息切れ、倦怠感、頭痛、爪の異常などさまざまな症状が起こります。

*漢方では***

血が(濃度としても量的にも)足りない状態を「血虚」といいます。血を生み出す力を高めて全体量を増やすことをポイントに、五臓の「腎」「肝」「脾」のはたらきを補う「補血薬」が効果的です。

漢方の「腎」には西洋医学の「腎臓」の機能(膀胱や尿など)のほか、成長・発育・生殖・内分泌系など生命維持に必要なものを生み出すはたらきがあり、血液も食事から「脾」(=胃腸)のはたらきにより消化吸収された栄養分をもとにつくられます。

(3)肩こり・便秘

慢性的な肩こり・便秘をかかえる女性は男性の倍以上の割合といわれます。

女性ホルモンの影響、自律神経の乱れ、ストレス、冷えなどによる筋肉の緊張や、下腹部には子宮や卵巣が腸と隣接しているなどの素因もあるようです。

*漢方では***

さまざまな要因によって血のめぐりが停滞した状態=「瘀血(おけつ)」ととらえ、「駆瘀血薬」による血流改善が効果的です。

「瘀血」は「気・血・水」の巡りのアンバランスからも起こりますので、「気」=ストレス、「血」=食事、「水」=睡眠、など生活面での養生も大切です。

(4)更年期と更年期障害

更年期は一般的に45~55歳頃(閉経の前後の5年)の約10年間にわたり、女性ホルモンの減少に生活環境やおかれる立場の変化が重なり、体調が不安定になりやすい時期とされます。

疲れやすい、集中力が続かない、汗をかきやすい、動悸、気分の浮き沈み、眠りが浅いなど不定愁訴も出やすく、日常生活に支障をきたすほどの状態は「更年期障害」といわれます。

*漢方では***

不安定なホルモンバランスと調経に関わる、五臓の「肝」のはたらきを整えるとともに、加齢による衰えに関わる「腎」のはたらきを補うことで改善します。

「肝」には「気」のめぐりをスムーズにする「疏肝理気薬」、「腎」には生命力の源である「精」を養う「補腎薬」を組み合わせると効果的です。

(5)妊活・不妊症

妊活を意識し始めたら基礎体温を記録することをおすすめします。

一般的には1年(年齢によりさらに短縮する場合もあり)、避妊せずに性交を行っているのに妊娠しない場合は不妊症と定義され、女性側の問題ととらえがちですが、原因は男女半々ですから、早めにご夫婦で検査を受けておかれるのもよいかと思います。

*漢方では***

原因不明の不妊症、一人目のお子さまは授かったのに二人目は思うように妊娠しない、など授かりにくい事情はさまざまです。

より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

(6)その他

子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、不正出血、やせ過ぎ、冷え症、甲状腺疾患、骨粗鬆症(こつそしょうしょう) 、認知症、抑うつなども多いお悩みです。

また、更年期女性に特有のトラブルとして「閉経関連尿路生殖器症候群(GSM)」も増えています。症状としては、性器症状(腟からの不正出血、腟・外陰部の乾燥感、痛み、 かゆみ、灼熱感、におい、ゆるみなど)、性交症状(性交痛、 潤いの減少、性感の減弱、性交後出血など)、尿路症状(排尿障害、頻尿・頻尿感、尿失禁、膀胱炎を繰り返しやすいなど)があげられます。

*漢方では***

生理=「血」にまつわる婦人科特有の病気や心身の不調を「血の道症」として、昔から「血の道」を整える漢方処方もたくさんあります。

初潮を迎える世代から生理を終えたアフター更年期世代まで、また、妊娠中の体調安定をサポートする安胎薬、産後の心身の肥立ちを助けて授乳中にも服用できる処方も用いられてきました。

漢方には、全世代の女性の心と身体をサポートする体制が受け継がれています。